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Paris way essay collection


敢えて過疎化に抗わない


「オラが村の良いところは、空気がきれいで水が美味い」

過疎化の波は、日本全土にあまねく公平に押し寄せるわけではなく、地方へ行けば行くほど、その波の破壊力は凄まじく、2050年を待たずして、日本の村の殆どが、ゴーストタウン化し、それこそ本当に、空気と水だけになっているかも知れません。

もちろん、地方の自治体はこの状況を静観しているわけでなく、様々な対策を講じていると思いますが、単に横並びの右へ倣えでは高がしれていますから、他の自治体との差別化を図ろうとするのですが、目玉となるものが無いばかりに、他の自治体のアレンジに走ってしまっているのが現状ではないでしょうか。

何事においてもそうですが、二番煎じにはリスクがあります。村興しに、ゆるキャラが真っ先に思い付くようでは、余りにもお粗末過ぎます。また、地元の食材を使った料理を売りにするのもよくあるパターンですが、時間とお金を掛け村に食べに来てくれ、しかも村を大好きになってくれるというのは、正にポエムの世界です。

過疎化対策の基本は、生産者人口を増やすことに尽きるのですが、交通の便が悪く、過疎化が顕著な地へ企業が進出して来るはずもなく、地方創成を掲げる政府の機関でさえ、地方への移転には消極的です。東京一極集中が諸悪の根源とは申しませんが、事ここに至って、更に東京都の膨張を許している政治と国民の意識には驚かされます。

この村に生まれ、この村で育ち、この村で結婚し、子供をつくり、子供を育て、その子供も都会へ出て行き、老夫婦二人で僅かな田畑を守り、齢を重ねる。もうしばらくすればお迎えが来るが、もちろん、この村に骨を埋める積りだ。そこにどんな対策を講じようというのだろう。どんな賑わいが、この老夫婦に似合うというのだろう。

過疎化の終末は、新しい時代が芽生える時でもあります。この先、1億3千万人の日本の人口が、どこまで減少するか分りませんが、そこには、その時代の環境にふさわしい発想が生まれて来るはずです。今、老夫婦が穏やかにその時を迎えたいというなら、そうさせてあげるのが、残された者の務めであります。

(※)国土交通省の試算によりますと、2050年の人口は9千7百万人で、2016年比で75%です。もちろん、戦後ベビーブームに生まれた私は、次の世で遊んでおります。合掌