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Paris way essay collection


人工知能に踊る


 最近、巷では人工知能「artificial intelligence、AI(えーあい)」なるものが盛んに喧伝され賑わっているのだが、黄昏のオッサン には、そのイメージらしきものが頭の中に思い描けるわけではなく、ただマスコミ報道に煽られるままに、茫洋としたものを膨らませ、さも未来の社 会は動かずとも、働かずとも、命令するだけでロボットなどが全てを遣ってくれるなんて、漫画のような世界を想像しているパリスのようなオッサン たちが多いのではないかと思う。

今の時代は、社会の様々な分野でコンピューターが導入され、それがインターネットで結ばれ、各種のデーターや情報の分析や処理を高速に 行うことにより、仕事の効率化や日常生活の利便性が高まり、社会は一昔前と大きく様変わりしている。もちろん、これ等は更に進化し続け、 近未来にはそれこそ漫画のような社会の変化を目にすることになるかも知れない。とはいえ、そこまではこの身は持たないであろうから、次の世 から眺めることしか出来ないとは思うが、あっそう!ぐらいで何の感情も湧かないだろう。

さて、人工知能という語を耳にする度に、何とも言えぬ不快感が湧いてくる。知能をざっくりいうと、頭の働きということであるから、知能の良し 悪しは頭の良し悪しに置き換えることが出来る。古来より、人間は自らの知能を活かして来たわけであるが、人工知能が出現するようになれ ば、当然ながら、より知能レベルの高いものが求められることは間違いなく、結果として、人間は人工知能よりも劣ると認定されてしまう恐怖心 を引き摺りながら、人生を送ることになる。また人工知能が日常生活に深く関わりだすと、人間の知能は低下し、退化してしまうだろう。そして 寿命や生存権さえ人工知能に委ねられるようになれば、人間の存在する意味さえ無くなってしまう。

そもそも、人間存在の意義を無視し、人間社会のベースである倫理観や道徳観を何一つ語ろうとはせず、未来の人間の幸福は文明の発達 でしか叶わぬと決めつける人工知能信奉者たちだけに語らせる社会の異常性に誰も気付いていない。これは未だファンタジーの世界であると 割り切っているのかも知れないが、あのフランケンシュタインのおぞましい姿が目に浮かんで仕方がない。また、世界の軍事面では、AI兵器にも 関心を持たれ始めているという。そうなれば殺戮を好むAI兵器が出てこないとも限らない。ロボット同士ならまだしも人間対殺人ロボットなんて のは、どう考えても人間が勝てるとは思えない。そんな兵器を生み出すことが文明だと誇れるのだろうか。

神は人間に神になってくれと言っているわけではない。神に代わって何かをしてくれと言っているわけでもない。人間は人間らしく生きろと言って いる。それが理解出来ないのであれば、近い未来に、神はこの世から全ての人間を清算しょうとするかも知れない。