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Paris way essay collection


心配と迷惑はどちらが先か


テレビを見ていると、不祥事を起こした企業の記者会見の席が映し出され、当の責任者の口から、「この度は、皆様にはご心配とご迷惑をお掛けし、誠に申し訳ありませんでした」と、先ずはこのような会見席での常套句が出てきた。責任者が口にした、この心配と迷惑を辞書で繰ると、次のように記述されている。

「心配」悪いことが起こらないかと不安に思い、気にすること。
「迷惑」あることが原因で、いやな思いをしたり、困ったりすること。

日常、よく使われる言い方としては、「親に心配を掛けちゃ駄目だよ」や、「人様に迷惑を掛けては駄目だよ」等が聞き慣れている。タマゴが先か、ニワトリが先か。今どき、そんなことを口にする人は、殆どいないが、こんな場で出て来る、この心配と迷惑という語は、どちらを先に口にすべきなのかを、時々考えてしまうことがある。

横でテレビを一緒に見ていた家人は、この会社の不祥事とは全く関係が無い立場であるから、「あんたのことなんか心配してないわよ。悪いことをしておいて、迷惑を掛けたことを謝るのが先でしょう」と、一方的に決めつける。家人のように、心配はその当事者と何らかの関係がなければ、あまりしないものである。その一方で、企業の責任者は、また違った見方も併せ持って会見に臨んでいるからややこしい。

それは、不祥事の結果その企業の株価が下落したり、企業の存続が危ういと思われる時には、株主は迷惑よりも心配が先に立つ。そこで責任者は、株主への配慮を優先し、「ご心配を」の言葉を先に持って来たりする。心配は、心配を掛けると心配をして貰うの対比であるし、迷惑は、迷惑を掛けると迷惑を掛けられるの対比である。不思議なことに、この四つのパターンの中で唯一異質なものがある。それは、心配して貰ってありがとう。という形だ。他の三パターンについては、ありがとうという言葉は出てこない。

ここから見ると、心配と迷惑には、少なからず軽重があるように思える。更にこの軽重を金銭的に置き換えると、心配料より迷惑料の方が馴染みだ。もしこういった席上では、心配と迷惑は同列であるとしても、微妙なニュアンスでその人の人格が疑われることもある。

潔く迷惑を掛けたことを謝罪した上で、併せて心配を掛けたことも謝るというのが、すっきりして良いと思うのだが、その立場でない気楽さからそう思ってしまうのかも知れない。と、まあ書いてみたものの、どうでも良くなった。貴方のお好きにしたら!