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Paris way essay collection


飽食をもてあそぶ社会


視聴者あってのテレビですから、どんな番組を制作しょうとテレビ局の自由なのですが、最近のテレビ番組は、食べ物関連の番組で溢れかえっています。

その内容は、どのテレビ局もたり寄ったりでレントや芸人や女性アナウンサーに食べさせ、シナリオがあるかのようなコメントをさせるといったワンパターンなものです。番組製作上、スポンサー絡みで仕方が無いこともあるでしょうが、一部の芸人達が、「旨い」とは言わず、取って付けたような「ウメ~ぇ」と下卑た言い方をし、しかも口の中に大量の食べ物を詰め込んで喋るから、口の中の食べ物が丸見えになる始末。視聴者からすれば、見たくないものを見せられた感じで、テレビ局の下品さと鈍感な感覚に厭きれてしまいます。

昭和二十年代、腹を空かせた少年は、おやつ代わりにご飯を食べる時代だった。ほどよい塩加減の漬物が唯一のおかずで、それが白米の旨さを更に引き立たせ、今風の表現では言い表せぬ味の深味があった。あれから半世紀以上が経ち、手を変え品を変え、新しい食べ物が次々と現れ、社会に満ち満ちていた。どこかで一つ当たれば、類似の商品が瞬く間に陳列棚を埋め尽くし、貪欲な購買者たちは、それらを選択する時間を惜しむかのように、胃袋に吸収して行った。

家庭の味母の味を棚に上げ、あの店のあれが旨いこれが旨いと、囃し立てるテレビ局や有名人にはうんざりする。目の前の料理や食品をパシャパシャと撮りまくり、あれ喰ったこれ喰ったと自慢したがる人達にはうんざりする。バカ高い金額で食材を競り落したと誇る経営者とそれを嬉々として報道するマスコミにはうんざりする。料理人のありきたりのこだわりを殊更に持ち上げて見せる自称グルメ通やフードコメンテェータ~にはうんざりする。ただ喰うためだけに何時間も順番待ちするさもしさ、いい歳をした大人が「食べること大好き」とのたもうさもしさ。こんな社会なら、食べ物関連の番組が増えて当然だと言える。

三つ星、二つ星と騒ぐ前に、飲み水すらままならず食に窮している沢山の国があることを知っておいて欲しい。限られた食材の先の手立てを何ら考えもせず、奪い合っていることを知っておいて欲しい。賞味期限を過小に設定し新鮮さをアピールする裏で、大量の食品が廃棄されていることを知っておいて欲しい。飽食の時代をもてあそぶのは止めて欲しい。いま鍛えなければならないのは胃袋ではない、食べ物への執着心でもない。今日もまた食べられるという感謝の気持ちだ。

食の安全を第一に考えるのは当然のことですが、まことの料理人は、傲慢な料理人が見向きもしなかった食材を活かそうとします。

日本にもフードバンクが増えつつあります。感謝!