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Paris way essay collection


癒しのお時間


漢字の部首の一つに、『疒(病垂れ・やまいだれ)』があるが、この部首を持つ漢字を目にすると、 何となく気が重くなってくる。「病」は、仏教でいうところの四苦(生老病死)にあるように、避けて通れぬ人間の宿命であるにも関わらず、日々、健康であるがゆえに、それが他人事であるかのように錯覚し、その現実に直面した時のギャップがそう思わせるのかも知れない。

因みに、この部首を持つ漢字をいくつか挙げてみると、「疼く(うずく)」や「痺れる(しびれる)」 などの病状を表す字、「痣(あざ)」や「瘤(こぶ)」などの身体的特徴を表す字、そして「癌(ガン)」のような難病名の字など、190字余りを数える(※詳細は「病垂れの漢字」を参照)。

さて、この部首を持つ漢字で、ちょっと異質と思える字がある。それは「癒し(いやし)」であるが、 癒しは「病気、悩み、苦しみなどを治す」というのが本来の意味であるが、巷では、気分転換的な意味合いで用いられることが多い。「癒されたい」とか「癒して欲しい」とか、感覚的に癒しを求めようとするスタイル(生き方)であるから、例えば、人気の美容室でカットをして貰いたいと思うのも癒しであるし、へべれけになるほど酒を飲みたいと思うのも癒しだし、癒し方は人様々であり、当の本人がそれで癒されたと思っているのなら、他人がとやかく言えるものではないし、言う必要もない。

こうなれば、その癒しに特化した商売も成り立つわけで、身体的な癒しであれば、マッサージやリラクゼーション、あるいはエステなどがあり、個室仮眠ルームのような休息を誘うサービスもある。もちろん、その癒しの効果が、本来の治すからかけ離れていても一向に構わない。利用する側がそれで満足すれば癒しは成立するのである。

齢を重ねると、身体の衰えも甚だしくなり、かといって、何か運動しょうとする前向きな気もさっ ぱり起こらず、怠惰な生活が当たり前であるかのように思ってくる。そこに癒しが必要かと問われると返答に困ってしまうが、敢えて理由を付けるとすれば、何となく気分が良くなりたい、それは手軽で面倒ではない、加えて大金を必要としない。

そこで目を付けたのが近所にあったリラクゼーションで、これまでに5~6回利用したが、慣れて来るとやはり物足りなさを感じて来た。 そもそも飽き性が取柄であるからかも知れないが、その一連の流れを身体が覚えてしまうと、変化という最も魅力的な部分を探そうとするがそれが無い。まあ他の店で試すのも有りだとは思うが、そもそも、そのきっかけがしゃきっとしたものではなく何となくであったから、求める癒しである はずもなく、他店に変わったところで、結果は同じことになるだろう。

考えるまでもなく、今はこのホームページのことに一番関心が行っている。もっと充実した良い内容のものに したい、自分で誇れるものにしたい、そう思いながら非力であるが取り組んできたはずだった。ということは、 このホームページに注力することこそ癒しではないのか。俗にいう趣味に没頭する、このことをすっかり忘れていた。出来栄えはとても誇れるものではないことは重々承知しているが、僅か一篇なりともエッセイをUPした時のあの何ともこそばゆい感覚、あの感覚こそが自分が求める癒しであったことを、覚り始めた今日で あった。