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Paris way essay collection


災害から学ぶ賢者の選択


人間の力ではどうにもできないことを、「不可抗力」と言うのだが、昨今の異状気象のせいか、日本各地で様
々な災害が発生し、多くの人命が喪われてきた。もちろんこの間、人間は何もせず自然の成すがままに傍観し
ていたわけではなく、こけまでに蓄積してきた様々なデータを活用し、その時のための色々な対策を講じてき
たのだが、同様の被害が何度も繰り返されるのは、個々人の防災意識が余りにも低すぎるからで、何の根拠も
なく、一瞬のためらいも持たず、自分だけは大丈夫と過信し、どのような災害を見聞しても、全て他人事とし
てスルーしてきたからである。

今ではお馴染みとなった再発防止策への言及だが、いつもありきたりの中身のない総花的なもので、しかも、
時間も費用も膨大に掛かることから、すぐにその意識は薄れ、むしろ、被災モニュメントを残すような非建設
的なことばかりに頭が行ってしまう始末だ。確かに、同じ被災者といえども、その細部の被災状況は様々で、
これからの復旧に向けての気力や財力も人それぞれであるから、行政側の再発防止の掛け声だけでは、防災意
識はすぐに変わってこない。

そもそも、日本は地震や台風、火山の爆発や雪山の雪崩など災害多発国にもかかわらず、居住可能な土地は限
られ、そこに一億三千万人も住もうというのだから、安全性が良くてしかも利便性も高い土地は高騰し、自ず
と安価な土地へと誘導されていくのだが、そこは山を削り造成した高台であったり、河川の堤防敷の隣接地で
あったりとなるのだが、もし山が崩れたりとか、もし川が氾濫したりとかの、一抹の不安があったとしても、
自分の土地を持てたという喜びが勝り、そんな不安はきれいに忘れ去られてしまう。

自然災害は仕方無いこと、万が一被災してもその時に考える、心の片隅でそう割り切っていたのだが、いざ被
災する身となれば、大変だ大変だと大騒ぎし、こんなことは一度も経験したことがない、今まで行政は何をや
ってきたのだと、怒りの矛先を探し始める。しかし日頃はどうであったろうか、危険な場所には近付かない、
暗い夜道は通らないなど、それなりの防災意識はあったはずだが、なぜか自然災害にだけは寛容といおうか、
無頓着で、実際に経験しない限りは無関心であろうとする。

そういえば、今年の夏は連日の猛暑きで、各地で熱中症が多発しているのだが、テレビ局のレポーターたちが
、どこそこの気温は何度だったと、太陽光線直射の手元温度計をかざして見せ合っている。マスコミこぞって
暑さを競うような社会はもはやお笑いの世界で、二年後のこの時期に、東京オリンピックが開催されるが、場
合によっては、悲惨な結果を招くことになるかも知れない。まあ、そんなことを検討しているのはエアコンの
効いた部屋でしっかりと上着を着こんだ人たちであるから、やっぱりお笑いの世界なんだろうね。

今求められているのは、全ての国民が防災意識を持ち、いざという時に正しい知識に基づいた判断が迅速に出
来て、自らの命を守ろうとする姿勢が取れるようになることであり、併せて、人命尊重と言う基本理念を周囲
の人達と共有し、皆が悔いなき人生を全うする社会環境の構築を速やかに推進することにある。そこで差し当
たり次の項目を提案したい。

  ①防災を義務教育化し、過去の様々な災害事例を身近なものとし学ばせ、その場合どうしたら
   良いかを、生徒たち自身に考えさせ、防災意識の向上と定着を図る。

  ②これまでの参加できるなら参加して型の訓練は廃止し、全員参加出来る小規模な訓練にシフ
   トし、充実度を上げるとともに、各自が出来ることを再確認し合う。

  ③行政側の机上だけでハザードマップを語り合うのではなく、全住民の意識の中にマップが浸
   透されるよう個人配布や閲覧場所を増やす。

  ④その都度召集や掛け声だけの連携を見直し、防災専門官を育成するとともに、即応性や機動
   性の高い高い部局を行政に固定常置する。

  ⑤防災関連法案や条例を見直し、事後処理に重点をおく発想を取り払い、常に防災を主眼とし
   法案や条例に改正する。

非難するかしないかは本人の自由、こんな戯言を耳にするが、非難する気がない人は非難しょうとする人の足
を引っ張っていることに気付かない。助かりたければ、一秒でも早く逃げる。賢者は逃げる方向を素早く見定
めその一歩が速い。被災する人はどこかで無理をし楽観的である。愚者と罵るわけではないが、学ばない人は
それなりの結果が待ち受けていること位は、気に留めておくべきだろう。