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Paris way essay collection


BABYMETAL


YouTubeで、BABYMETALの「Road of Recistance」を初めて見た時、長い間、頭の何にこびり付いていた何とも言えぬ不快なヌメリが、少しずつ溶けていくような気がした。
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BABYMETALが何者で、どんな活動をし、どんな評価を受けているかは、ネットで検索すれば、すぐに分かることであるから、ここに書くことはやめるが、BABYMETALがこれまでの画一的で新鮮味に乏しい日本の音楽界に、大きな衝撃を与えた事は間違いなく、しかもこの衝撃は、未だ進化し続けているのだ。
  

先ずは、頭の中の不快なヌメリの話をしたい。2005年12月、突然、無名の一団が自らをアイドルと言い始めた。AKB48の誕生である。見ればどこにでもいるような女の子達が超ミニスカートで、歌い踊っていたが、それは学芸会レベルのものであり、これまでのアイドルとは一線を画するものであった。ところが、この自称アイドル集団がなんと化け始めたのだ。

そこには緻密な戦略があった。いつでも会いに行けるアイドルとして身近さを強調し、握手を多用して更に親近感を増し、タイプの違う女の子達を多数揃え、見ている者に好みを競わせた。これに非モテ系のオタク達がハマった。いつしか、AKB48の名は日本中に浸透し、更にこれに乗じた類似グループが次々とバラ撒かれ、ついには国民的アイドルとの称号さえも名乗り始めたのだ。

これを不快なヌメリと感じたのは、私だけかも知れないが、一方的にアイドル像を金儲けのために弄び、その価値観を押し付けられるほど不快な事はない。そしてその不快さが、一時的なものではなく、いつまでもぬるぬるとした嫌な感触を放ち続けていたのである。

そこに一筋の光が差した。2012年、BABYMETALの誕生である。AKB48と同世代といってよいが、彼女達は三人組のユニットであり、芋の子を洗うがごとくのAKB48のステージスタイルとは明らかに違っていた。一番の違いは、顔付きである。彼女達が楽曲に入る時は、構える姿勢を取るのだが、その顔は、真剣勝負をするかのような顔付きとなる。アイドルになりたいだけであれば、真剣になる必要はなく、むしろ自分の可愛さをアピールすれば良かったが、彼女達が目指す先には、音楽界にBABYMETALという分野を造り上げる壮大な目標があったのだ。

彼女達が日本の他のグループと違うところは、国内のテレビ露出よりも、海外公演を主としていることだ。それは彼女達が目指しているメタルという分野に、関係しているのではないかと思うのだが、メタルとアイドルの融合という妙ちくりんな戦略が、日本語の歌詞も理解出来ぬ外国人達になぜか受けたのだ。彼女達の歌唱力とダンスのキレはハイレベルにあり、しかも楽曲のユニークさやバックバンドの卓越した演奏力、そして煽りに煽るパフォーマンスの強烈過ぎるステージに外国人達は度肝を抜かれたのかも知れない。

もちろん、これまで何度も日本のグループが海外公演しているが、それはあくまで、日本の可愛い文化の範疇であり、BABYMETALのように、海外の音楽雑誌に大きく取り上げられ、しかも音楽チャートにランクインすることは殆ど無かった。正にこれまでの日本音楽界に新風を巻き起こしたのである。今の時代、アイドルという呼称は、単に職業の名称に過ぎない。誰からも好かれなくても、知名度が全く無くても、自称アイドルとして通用するのだ。